104号 「まさか」の坂

「かわら版」の完全版はこちら  →  第104号 30年10月号 

「ブラックアウト」

自民党の総裁選で安倍総理が勝利し現状の路線が続きそうです。

第一期安倍内閣は体調不良などにより366日に終わり、退陣に際し小泉元総理曰く「人生には三つの坂がある。」・・「のぼり坂」、「くだり坂」、そして「まさか」である。

自身の後任である安部総理が突然辞任したのは「まさかとしか云えない。」と驚いていました。

それから十数年・・総裁選告示の前日6日に北海道全域で想像もしなかった「まさか」が起こりました。

大きな台風が通過した翌日に地震が起こり、さらに主要な発電所が震源地となるなど偶然に偶然が重なり日本初のブラックアウトが発生、その後の回復までの道のりは皆さんがご存知の通りです。

幸運な事も我が家にはありました。ガスボンベの買置きがあり、ガソリンも入れたばかりと良い偶然もあり、多少の不自由で済みました。

私たち北海道民と一部の旅行客は予期しないブラックアウトで困惑しましたが、未だに多くの人が被災生活を強いられ、まだ被災地域や観光地では通常の風景に戻るには時間がかかりそうです。

とは言え・・企業にとっては売上の回復が遅くなることは致命的になります。自社のみではなく経済全体を考えると自粛ムードもそろそろ終わりにする必要がありそうですね・・。

「日頃の備え」

今回の停電では私たち自身油断があった事は認めなければなりません。すぐ復旧すると高を括っていましたが・・いつまでたっても復旧せず・・物資が足りなくなるとの不安からコンビニ、スーパー、ガソリンスタンドなどに行列が出来ました。

日頃からの「まさか」への備えは大切ですが電気、水道に次ぐインフラとして身近にある「コンビニ」の重要性も感じました。また、今回の停電が真冬ではなかったという事で最悪のシナリオにならなかったのは不幸中の幸いでした。

「足りない・・」

いつも同じ話で恐縮ですが・・中小企業では、いつも「ヒト、モノ、カネ」といった経営資源が不足しています。

今回の停電では、私たち一人一「人」が「カネ」の大切さ、「モノ」不足の不便さを感じたのではないでしょうか。

企業は儲けを少しずつ積みかさねる事で「カネとモノ」を増やせます。しかし、「ヒト」は採用したからと言ってすぐには戦力にはなりません。彼らが育つまでは人手不足の状態は解決されないのです。

「カネとモノ」が乏しい中でも中・長期を考え「人」を育て続ける必要があります。

「ブラック〇〇?」

先日、ある税理士の会で一人一人が近況を発表する場面がありました。「お客さんが増えない」、「人が来ない又はすぐ辞める」との二つの悩みに集約され税理士業界も一般企業と同じ悩みを抱えています。

その席上、札幌では成長著しいと言われている税理士から衝撃的な発言がありました「開業して11年、ついに新入社員ばかりになって大変だ・・」との事です。その事務所にとっては「まさか」に直面です。

つまり、開業から11年たって定着した人が一人もいない、育てては辞めると言う悪循環に陥っているのです。給与水準や残業時間などが「ブラック」なのか、日頃の「笑顔」が仕事時では別人なのかの判断はつきませんが、時間を割いて教育した11年間の財産の蓄積「人財」が何も貯まっていないのは厳しい現実です。

結局、税理士事務所だけではなく全ての企業にとって従業員が定着しない事は損失でしかありません。

経営は、常に厳しい「上り坂」と悲しい「下り坂」の連続です。それに「まさか」がやってくるのですから・・経営者にとって企業経営とは「坂」との闘いだといっても過言ではないでしょう。

いつか大切に育てた「人財」が嬉しい「まさか」を運んでくると信じたいですね・・。